契約恋愛~思い出に溺れて~
地下鉄を降りて、オフィスビルの立ち並ぶ通りを歩く。
周りはビジネスマンが一杯で、紺色のスーツが群れをなしているようにも見える。
それを落ち着くと感じるのは何故だろう。
社会の一員として、自分が存在していると思えるからだろうか。
ビルの15階に入所している私の会社。
企業向けのWebシステム構築が主な仕事だ。
「おはようございます」
「おはよう、横山」
「あ、おはよう! 紗彩」
「渚、おはよう」
部長に挨拶をすませると同時に、同僚の渚(なぎさ)がやってくる。
数少ない女性の同期だ。