契約恋愛~思い出に溺れて~
「今日の飲み会来れるよね。紗彩が主役なんだから!」
「私だけじゃないでしょ。渚もじゃないの」
「えーあたしは去りゆく人間だからどうでもいいのよ。
紗彩の昇進の方が嬉しいよ!
女性も管理職になれるんだって、後輩たちの希望になるわよ、きっと」
ニコニコ笑いながら、私の背中を叩く渚の左手には、美しい輝きを保つ指輪がおさまっている。
入社して8年。
ついに三十路の世界へ入ってしまった私たちには、色々と転機が訪れる。
ずっとバリバリ働いていた渚は、ついに結婚し退職する。
私はというと、今回管理職への昇進の辞令を受け取った。
肩書きとしては『ソリューション開発課課長』
一応部長の下にいる数人の管理職の一人になったという訳だ。
同期の男性社員と比べても見劣りしない。
間に1年産休があったことを考えれば早い方だろう。
役職が変わったことにより、残業や雑務は増える。
自分の下で働いてくれる人を理解しなければいけないと思うし、
彼らに尊敬されるような成果を残していかなければ、形だけ役職があってもうまく行くはずがない。
前にも増して仕事には注意を払うようになった。