契約恋愛~思い出に溺れて~

娘の記憶


 仕事が休みの土曜日、
私は朝から仏壇の掃除をした。

ここのところ忙しかったから、
部屋も掃除機をかけるだけで棚を拭いたりしていなかった。

気がつけば埃がたまっていて、ユウの遺影が少し曇っていた。


「ごめんね、ユウ」


そう呟きながら、写真を一拭きする。


日に焼けた顔。
意志の強そうな瞳。

写真の中のユウは、
あの日から年をとらない。

いつの間にか自分の方が年上になって、

ユウのその姿を『若いな』と思うようになる事が不思議であり切なくもある。


< 164 / 544 >

この作品をシェア

pagetop