契約恋愛~思い出に溺れて~
「さ、紗優のパパはここにいるでしょう? ほら、……あちっ」
私は再び写真をとろうとして、うっかり先ほど付けた線香を触ってしまった。
「ママ、だいじょうぶ?」
紗優が慌てて私の手を握る。
だけど、私の顔を見るなり、怯えたように少し後ずさった。
「紗優」
「ママ、いたいの? おみずでひやす?」
「う、うん。ごめんね、紗優」
立ち上がって、洗面所へと向かった。
いつもなら、離れるのを嫌がってついてくる紗優が珍しくついてこなかった。
そして、洗面台の鏡を見て、自分の表情に納得した。
眉にしわが寄って、少し目が潤んでいる。
目つきも悪い、ヒドイ顔だ。
紗優が怯えるのも、無理はない。