契約恋愛~思い出に溺れて~

 終業の時間が過ぎ、部署内皆で移動を始める。

幹事は今年入社したばかりの新人・青柳(あおやなぎ)くん。
緊張しまくっていて、何だか可哀想なくらい。


「では、よ、横山さんの昇進と、笹山さんのご結婚を祝って、僭越ながら乾杯の音頭をとらせていただきますっ」


どもりながらもひと際大きな声で彼がそう言うと。

皆がグラスを持ち上げて、「乾杯」と口々にいいグラスを鳴らす。

やがて、話題は渚の結婚相手の事に移っていく。

私は以前からその話は知っているので、少し離れたところでゆったりとお酒を口に含んだ。


「横山ちゃん、おめでと」

「橘さん」

「凄いよなぁ。まさか俺より先に昇進するなんてさ」


橘(たちばな)さんは私より一つ年上の先輩だ。
前々から女性蔑視の考えの強い人で、私には風当たりが強い。


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