契約恋愛~思い出に溺れて~
英治くんは紗優を肩からおろし、一度ギュッと抱きしめた。
こんな風に、紗優が保育園でのことを英治くんに話すのが不思議で仕方がなかった。
私にだって、そんなに話してくれない。
聞いたって、いつも「楽しかったよ」っていうだけで。
私が呆けて二人を見てると、英治くんの声が響く。
「紗彩ちゃん、もう平気?」
「え?……うん」
「じゃあ、二人とも乗って。グローブを買いに行こう」
「いいの。やったぁ!!」
嬉しそうに紗優が笑って、私はずっとその姿を見ていた。
近くのホームセンターで、安物のグローブとボールを買って、コンビニでおにぎりを五つとジュースとお茶を買って、少し離れたところにある大きな公園に行った。
「なんでキャッチボールだったの?」
ゆっくりボールを投げながら英治くんがそう聞くと、紗優は嬉しそうに笑った。