契約恋愛~思い出に溺れて~
親と子供
待っている時間は長い。
土曜日までの日々が、こんなに長いと思ったのは久しぶりだった。
なんとなく、約束が頭から離れなくて、気がつくとカレンダーを見て曜日を確認してしまう。
思春期の女の子みたいな自分がほとほと嫌になる。
そうしてようやくやってきた土曜日は、あいにくの雨で、紗優はあからさまにしょげた。
「これじゃあ、おじちゃんとキャッチボールできない」
「あのね。今日はご飯食べに行くだけ。遊ぶ約束までしてないよ」
「えー、だってー」
ツインテールに結った髪の両端を持って、口元に押しあてる。
そうすると髪が臭くなってしまうからやめなさいって言っているのに、もう癖になっているようだ。
私と紗優の会話を聞いて、母が顔をほころばせる。
「その人とは上手くいってるみたいだね。いつ会わせてくれるんだい?」
「お母さん、……そういう関係な訳じゃないんだってば」
いちいち再婚と結び付けるのをなんとかして欲しい。
玄関先で待っていると、またいろいろ言われてしまいそうなので、約束の時間より先に外に出た。