契約恋愛~思い出に溺れて~
紗優にピンクの傘を渡して、自分はベージュの傘をさす。
雨音が響いて、まるで歌っているみたい。
「おじちゃん、くるまでくるの?」
「うん。そう言ってたよ」
そんな話をしているうちに、白いワンボックスカーが水をはじきながらやってきた。
「おじちゃん! おじちゃん!!」
紗優が飛びあがって、車が止まるのを待つ。
その姿を見ていたからか、英治くんは窓を開ける前から、すごく穏やかに微笑んでいた。
「おはよう。紗優ちゃん、紗彩ちゃん」
「おじちゃん、おはよう!!」
「おはよう」
紗優のあまりにはしゃいでいるので、逆に私は冷静になっていく。
今日の英治くんは首の空いたセーターの上にパーカーを着こんだ、この間よりラフな格好だ。
ふとした拍子に鎖骨がみえて、なんだか妙にドキドキしてしまう。