契約恋愛~思い出に溺れて~
買い物を終えて、家の前まで送ってもらう。
紗優は名残惜しそうに、何度も運転席を覗きこんだ。
「今日はありがとう」
「うん。紗優ちゃん、またね。楽しかったよ」
「おじちゃん、またキャッチボールしてくれる? いつか」
「はは。いつかね」
英治くんは、紗優に笑いかけた後、私に目配せをした。
その動作の意味を読み取れなくて、私がキョトンとしているうちに、車は走って行ってしまった。
「ママ、楽しかったね」
「うん。そうね」
「今度いつ会えるかなぁ」
嬉しそうな紗優を見ながら、複雑な気分を悟られないように、曖昧に頷いた。
夜眠るまでずっと、紗優は英治くんの話を繰り返す。
興奮したのか、21時を過ぎても中々寝てくれなかった。