契約恋愛~思い出に溺れて~
22時をまわってようやく紗優が眠ったので、そっと布団から抜け出した。
小さな仏壇の前に座って、お線香を一本立てる。
なんとなく、申し訳なくて。
心の中で「ごめん」と呟いた。
写真の中のユウは笑ったままで、ヤキモチを妬いたりはしない。
「……他の男の人と居るのに、楽しかった」
小さく口に出してみて、泣きたいような気持になる。
「ごめん。私、意地悪ね」
ユウが生きていたら。
そんな風に考えてみたって、ユウは生き返りはしない。
だけど、やっぱりこんな時に、
抱きしめてくれたらと、思ってしまう。
そうしたらきっと、気持ちは揺らいだりしないのに。
動いてるこの気持ちを、どうしたらいい?
ユウ、あなたが好きなの。
ずっとずっと好きでいたいの。
だけど、それとは別に英治くんが好きだって気持ちは、確実に育ってる。