契約恋愛~思い出に溺れて~

22時をまわってようやく紗優が眠ったので、そっと布団から抜け出した。

小さな仏壇の前に座って、お線香を一本立てる。


なんとなく、申し訳なくて。

心の中で「ごめん」と呟いた。


写真の中のユウは笑ったままで、ヤキモチを妬いたりはしない。


「……他の男の人と居るのに、楽しかった」


小さく口に出してみて、泣きたいような気持になる。


「ごめん。私、意地悪ね」


ユウが生きていたら。

そんな風に考えてみたって、ユウは生き返りはしない。

だけど、やっぱりこんな時に、
抱きしめてくれたらと、思ってしまう。

そうしたらきっと、気持ちは揺らいだりしないのに。

動いてるこの気持ちを、どうしたらいい?

ユウ、あなたが好きなの。

ずっとずっと好きでいたいの。

だけど、それとは別に英治くんが好きだって気持ちは、確実に育ってる。

< 213 / 544 >

この作品をシェア

pagetop