契約恋愛~思い出に溺れて~
怖い。
それが大きくなるのが。
達雄との時は、ユウへの気持ちは揺るがなかった。
だから安心して、付き合ってられた。
どんなに体を許したって、私と達雄との間なら、一定の距離が必ずあったから。
なのに今は、ユウの思い出がどんどん押されていくのが、怖くてたまらない。
英治くんとは付き合ってる訳でも、なんでもないのに。
その時、静まり返っていた空気が震えた。
振り向くと、枕元に置いた携帯電話が振動していた。
紗優が寝るからと思って、マナーモードにしていたからだ。
慌てて手にとって、表示された名前に息が止まる。
【葉山英治】
吸った息を吐き出すまでには、一瞬というには長い時間が必要だった。