契約恋愛~思い出に溺れて~
電話の声と響く鼓動
『もしもし?』
低い声に、右上がりのトーン。
ユウの遺影の前でその声を聞いて、動揺しそうな自分が怖い。
私は出来るだけ音をたてないように別室にうつった。
「英治くん? 今日はありがとう」
『どういたしまして。紗優ちゃん、寝た?』
「うん。さっきね。ちょっと興奮してたみたい」
部屋の中は寒く、私は慌てて暖房を入れる。
物音に気付いたのか、英治くんが気づかうような声を出した。
『忙しい?』
「ううん。違うの。別な部屋にうつっただけ。それよりどうしたの?」
『さっき言ったじゃん、後で電話するって』
「嘘。言ってないわよ。そんなこと」
『言ったよ』
そうだっけ。
一通り思い返してみても、やっぱりそんなこと言ってない。