契約恋愛~思い出に溺れて~

今から帰ったら、家に着くころにはもう紗優は寝ているだろう。

あの子は9時には布団に入る。
母に、ちゃんとそうしつけられていた。


帰らなきゃ……。
そう思うのに、足はのろのろとしか動かなかった。


家に帰るのも辛い。
また、両親から遅くなったことや飲んできたことを咎められるのも嫌だ。

もっと楽しい、懐かしい思い出に浸りたい。


「そう言えば……」


駅前まで辿りついて、ふと思いだす。

この辺りにあったはずだ。
ユウに告白したブルースバー。

ユウが以前から行きつけていたというバーで、
女性オーナーのピアノ演奏が評判だった。
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