契約恋愛~思い出に溺れて~


「え……と、あの、でも」

『ごめん。紗優ちゃんもいるもんな。……土日は家族サービスデーって言ってたね』


彼は私の戸惑いを違う風に解釈したらしく、ブツブツと呟くように謝ったあと、気を取り直したように言った。


『平日、どこかあけてもらえる?』


残念に思いながらも、ホッともしていた。
今会ったら、何を口走ってしまうか分からない。

少し冷静にならないと。

一つ息を吸い込んで、頭で考えながらゆっくり答える。


「い、いいけど。早い時間は無理よ。知ってるでしょう?」


達雄と付き合っていた時も、紗優が起きてる時間に帰れる日は予定を入れなかったから、会うときはいつも21時を過ぎてた。

だからよく、英治くんは私が来るまで、達雄の飲み相手になっていてくれたんだ。

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