契約恋愛~思い出に溺れて~
それは、彼女と一緒にいるから?
さっきの、ショートヘアの可愛い女の人。
あの人は、英治くんにとって、先に入っている約束を反故にするほど大切な人なの?
英治くんが、私や紗優に構ってくれたのは、やっぱりただの同情でしかなかったの?
「……」
言い様のない虚脱感。
急がなきゃ、いけないのに。
足は中々動かなくて。
座りこんでしまいそうな自分を、立たせているだけで精一杯で。
どのくらい時間がたったのか。
急ぎ足のサラリーマンとぶつかるまで、私は茫然とその場に立ちつくしていた。