契約恋愛~思い出に溺れて~
帰る場所
会社についたのは、18時を少し過ぎていた。
遅れてしまったので頭を下げながら、会議室に入り席につく。
ホワイトボードに書かれる補足説明を資料に書きこみながらも、頭の中ではさっき見た二人の姿が何度も蘇ってくる。
何を期待していたっていうんだろう。
もうそこそこいい年で、しかも子持ちなのに。
何を図々しく考えてた?
英治くんが優しくしてくれたのは、ただ、自分と似た境遇の紗優を放っておけなかっただけなんだ。
『優しくされたら、……弱いもの?』
そうだよ。
弱いよ。
だってもう、いつの間にかこんなに、心を奪われていたんじゃないの。
罰があたったんだ。
ユウのこと、大好きなのに。
体だけ慰めてほしいなんて、達雄に甘えて。
でもその達雄とも、駄目になって。
気が抜けてしまったその瞬間、いつの間にか、英治くんがそこにいた。