契約恋愛~思い出に溺れて~
それから何度か、英治くんから電話が来ていた。
たまたまだけど、いつも出れるタイミングではなく、不在着信のところに彼の名前が刻まれていく。
話したいけど、何を話したらいいか分からなくて、かけなおすことができなかった。
週末を前に、一度メールが来た。
【ドタキャンしたこと、怒ってる?】
さすがに、これまで無視するわけにはいかなくて、しばらくの間ゆっくり返事を考えて書き始める。
【怒ってなんかないです。
忙しいだけ。
紗優の事は、ちゃんとみてるから、
英治くんも、無理に私に構わなくて大丈夫です。】
意地を張ってこんなこと書いて、送ってから後悔が押し寄せる。
電話かけてくれたことも、メールをくれることも、嬉しいのに。
思い出すたび、あの女の人まで思い出して辛い。