契約恋愛~思い出に溺れて~
「懐かしい……」
久しぶりに胸が躍った。
そうだ。
あの店に行こう。
ユウが死んだ頃、麻子さんもお亡くなりになったと聞いた。
だけど確か、甥の倉崎さんが跡を継いで経営していたはずだ。
彼はギター演奏はするけれど、ピアノは弾かない。
だから、あんなピアノはもう味わえないけれど。
あの拍手の波を体感したい。
ユウとの思い出に浸りたい。
誰も私を批難しないところで、
思いっきり泣きたかった。