契約恋愛~思い出に溺れて~
「はい、お茶。紗優ちゃん寒くないかな」
「大丈夫よ、子供だもの。……これ、遅くなったけど。この度はご愁傷様でした」
私は用意していた香典袋を手渡す。
達雄は苦笑してそれを受け取った。
「わざわざいいのに。紗彩は真面目だな」
「常識でしょう。どうして教えるな、なんて言ったのよ」
「英治が言わなかった?」
「達雄に聞けって言われたわ」
達雄は香典袋を仏壇に置き、一度手を合わせる。
「……英治と、どうなってんの?」
瞼を上げるのと同時に達雄が言う。
「どうって、別に」
「付き合わないの?」
「どうして、そんなこと聞くの」
ゆっくりと、達雄の視線がこちらを向く。
何故だかドキリとして、私は背すじを伸ばした。