契約恋愛~思い出に溺れて~
「達……」
「紗彩は、母親が亡くなったって知ったら、絶対こうやって来るだろうと思ってた。……だから英治に言ったんだ。紗彩に言うなって」
「きちゃ、駄目だったの?」
「……俺今、結構弱ってるから。紗彩に来られると甘えたくなる」
目を伏せて呟くように言われる。
何故だか動悸が速くなって、口の中に溜まってきた唾を、悟られないようにゆっくりと飲みこんだ。
「この間の電話の時から思ってたんだ。英治と二人で会ってるんだろ?」
「二人っていうか、……紗優もよ。三人で」
「俺には一度も会わせてくれなかったのに?」
まっすぐな視線が、責められてるようにも感じる。
どうして?
私たちの間にはそんな恋情なかったはずなのに。