契約恋愛~思い出に溺れて~
「英治くんが、紗優を心配してくれてるだけよ。私は、おまけみたいなもんで」
「じゃあさ」
達雄が立ち膝で一歩近づいてくる。
「俺とよりを戻さない?」
「え?」
「綾乃は婚約者と結婚すると、俺に言った。だったら俺は、アイツの帰れる場所でいなきゃいけない。
結婚して、新しい家庭をつくるのは大変なことだろ。
帰る場所がなかったら、綾乃が可哀想だ。
母さんが死んだ今、その場所を守ってやれるのは俺だけだ。
だから、気持ちを伝える事はもうできない。
……以前と同じになったんだ。
紗彩さえ良ければ、もう一度
契約関係に戻らないか」
突然の言葉に、頭が回らない。
達雄とよりを戻す?
そんなこと考えてもみなかった。