契約恋愛~思い出に溺れて~
私は両手で彼を押し返した。
「やめて」
「紗彩」
「もう、出来ない。契約恋愛は」
「どうして」
「だって」
好きになってしまった。
英治くんを。
それは、認めたくないけど本当のことだ。
死んだユウに対しては、罪悪感だけで済んだ。
だけど、英治くんは生きてる。
あの人に、嫌われたくない。
あの人に、軽蔑されたくない。
あの人に見せれないような自分になりたくない。
涙が自然に浮かんでくる。
だけど、泣きたくなんかないから、必死に堪えた。