契約恋愛~思い出に溺れて~
「好きな人が、……出来たから」
ユウを忘れられるのか。
そう問われたら分からない。
忘れたくない思いも、本当はまだ持ってる。
だけど、そんな迷いも何もかも押しやって、
彼が心の中に居座ってしまった。
どうしてだろう。
生きてるから?
英治くんは、両足をこの地につけて、力強く生きているから。
だから私がどんなに抑えようと思ったって、無理なんだ。
彼の一挙手一動作に、どうしようもないほど引き付けられる。
生きてるって、それだけでものすごい力を持ってるんだ。
「……そうか」
小さく呟かれた達雄の声に顔をあげると、どこか嬉しそうにも見える笑顔があった。