契約恋愛~思い出に溺れて~
「だから、俺からも言わせてもらう。
ちゃんと好きな男が出来たんなら、過去のことは忘れて向かっていけよ。
紗彩はまだ32だろ。人生を終わらすには早い。
きっと死んだ旦那だってそう思うはずだ。
好きな人が、幸せになるのを反対する理由なんかない」
「……達雄」
「俺はもう叶いそうにないから、紗彩だけでも幸せになってくれ」
叶わない想いを、相手に託し合って。
私たちは、やっぱり『同士』だ。
弱い時は慰め合って、希望が見えれば互いに託す。
あなたは私がここまで立ち直るのに、必要な人だったんだ。
その時、外から車の音がした。
紗優が一人で待ってたのを思い出して、玄関の方を向いた。
「おじちゃん!!」
聞こえたのは、嬉しそうな紗優の声。
あの子が、あんな風に呼ぶのは一人だけ。