契約恋愛~思い出に溺れて~
「……っ」
何も考えてなかった。
ただ、足が勝手に玄関に向かって行った。
理性とか常識とか、考えられなくなったら。
それが恋をしてるってことなんだろう。
前も後も考えられない。
ただ今、この瞬間、あなたがそこに居るんだと思ったら足が動いた。
会いたい。
英治くん。
会いたかった。
「……英治くんっ」
勢いよく玄関を開けると、見えたのは白いワンボックスカー。
紗優に笑顔を向ける英治くんが、私に気がつくと寂しそうに笑った。