契約恋愛~思い出に溺れて~
英治くんは達雄を見たまま、それ以上は動かない。
紗優が、少し困ったように私をじっと見ていた。
「……どうしてだと思う?」
達雄がポツリと言う。
「泣かせたのか?」
「俺が? なんでそう思う?」
「……甘えたくなるって、お前言ったじゃないか」
「言ったよ。本心だ。だから教えるなって言ったのに、英治が教えたんだろ?」
「それは……」
彼は迷ったように、一度目を泳がせる。
その後で私の方を向いた。
唇を真一文字に閉じて、突き刺さるようなまっすぐな眼差しで。
"目が語る"
そんな言葉が頭に浮かぶほど、刺さる視線には意志が感じられた。