契約恋愛~思い出に溺れて~


「いいの?」

「乗って。後でゆっくり話そう。でもその前に、紗優ちゃんを満足させてあげたい」

「……ありがとう」


自然に頬が熱くなるのを感じた。

英治くんが、紗優を忘れずにいてくれることが、とても嬉しい。

シートにしみ込んだ煙草の匂いに、懐かしささえ感じて。


私は紗優の隣に座ると、運転席の彼の姿をじっと見つめた。


私のあんな告白が、伝わったのかどうか分からないけれど。

後で話そうと言ってくれた。

頭から拒絶されなかった事に安堵して、私はシートに背中を預けた。

< 278 / 544 >

この作品をシェア

pagetop