契約恋愛~思い出に溺れて~
「いいの?」
「乗って。後でゆっくり話そう。でもその前に、紗優ちゃんを満足させてあげたい」
「……ありがとう」
自然に頬が熱くなるのを感じた。
英治くんが、紗優を忘れずにいてくれることが、とても嬉しい。
シートにしみ込んだ煙草の匂いに、懐かしささえ感じて。
私は紗優の隣に座ると、運転席の彼の姿をじっと見つめた。
私のあんな告白が、伝わったのかどうか分からないけれど。
後で話そうと言ってくれた。
頭から拒絶されなかった事に安堵して、私はシートに背中を預けた。