契約恋愛~思い出に溺れて~
「ほら、紗優ちゃんに置いてかれる」
当然のように差し出された手に、恐る恐る手を伸ばすと、彼は私とは正反対のすばやさで、手を掴んで歩き出した。
嘘みたい。
手を繋いでる。
心臓がドキドキして、ふわふわしているような幸福感に包まれて。
それでいて泣きたくなる。
私の手を引く、力強い手。
広い肩、ダークブラウンの揺れる髪。
好き。
こみ上げてくるこの気持ちに、もう嘘はつけない。
英治くんが好き。
大好き。
それをユウへの気持ちと比べる事は出来ないけれど。
叶うなら。
もうこの手を離したくない。