契約恋愛~思い出に溺れて~
「だからねぇ。パパにみせにきたの」
「何……を?」
恐る恐る聞いた言葉に、紗優は何のてらいもなく続ける。
「おじちゃんを」
風が吹いて、水槽の中の水が揺れる。
透明な水槽に光の陰影が生まれる。
紗優は、英治くんの腕を引っ張ると、水槽の近くまで連れて行った。
「パパ。この人がおじちゃん。サユにキャッチボールをおしえてくれたの」
「サユちゃん」
「パパみたいにかたぐるまもしてくれるの。サユ、おじちゃんがだいすき」
「……紗優」
「パパもきっとすきになるよ」
無邪気な言葉。
恋愛感情とか大人の持つ事情とかを、皆取り払ったら、紗優のように思えるんだろうか。