契約恋愛~思い出に溺れて~
近づく距離
ぼんやりとした意識の中に、紗優の声が響く。
「……だって、ママもあいたいって」
「ホントに?」
「うん。サユがあいたいっていったらね。ぎゅってしてくれて、そういったよ」
相槌を打つのは男の人の声。
ちょっと、紗優ったら何言ってるの?
そんな恥ずかしい事誰にも言わないでよ。
「それは光栄だねぇ」
「こうえい?」
「はは。うれしいってこと」
聞き覚えのあるフレーズ。
これ、英治くんの口癖だ。
じゃあ紗優が話してるのは、英治くん……?