契約恋愛~思い出に溺れて~
視線の角度が変わり、彼と目が合う。
どこか艶めいた表情に、私の心臓がまた激しくなる。
「……キスしてもいい?」
耳に届く言葉に、体が震える。
「な、なんでそんなこと聞くの?」
彼はクスリと笑うと、茶化すように言った。
「逃げられそうだから」
「に、逃げたりなんかしないわよ」
嘘。
本当は逃げたい。
だって、こんなに心臓はバクバクしてて。
キスなんて何度だってしてるはずなのに。
ファーストキスに戸惑ってる少女みたいになってるのが恥ずかしい。