契約恋愛~思い出に溺れて~
近づいてくる彼の顔を、もう見てる事も出来なくて目をつぶった。
瞬間、響いた小さな声。
「好きだよ」
その響きに、体の奥がジンと温かくなって。
不意に涙が出そうになった。
「……んっ」
重なる唇はとても温かくて。
あんなに恥ずかしがってたはずなのに、今度は離れるのが嫌になった。
ゆっくりと離れていく唇に、追いすがるように私の腰が少し浮く。
それに気づいたのか、彼の空いている方の手が、強く私を引き寄せた。
途端に、広がるのは服にしみついた煙草の匂い。
抱きしめられた上半身が、彼の匂いに包まれる。
「……初めて、誰にもやりたくないって思った」
「え?」
「こんな風に人を好きになる事もあるんだなぁ」
「ほ、ホントに?」