契約恋愛~思い出に溺れて~
私の左手の薬指にある、結婚指輪。
今だ外していないそれを、彼はどう思ったのだろう。
「い、嫌よね。こんな。前の夫の結婚指輪をしてるなんて……」
「ああ」
英治くんは、納得したように私の指先を見る。
そして、その上に右手を重ねると指輪に触れて、小さく吹きだすように笑った。
「……紗彩ちゃんって、二股とかしたことないでしょ」
「は? あ、当たり前でしょ。二股なんて」
しない。
……と言いたいけど、今の感情はまさにそんなのじゃないのかしら。
英治くんが好きで。
ユウの事も忘れられない。