契約恋愛~思い出に溺れて~


「……あのさ」

「なに?」

「俺は、君が旦那の事忘れなくても、構わないよ。

言ったろ? 欠陥品だって。
死んだ人間にまで嫉妬できるほど、俺は正常じゃない」

「英治くん」

「むしろ、母親である紗彩ちゃんじゃなきゃ、駄目だった気がするしね。
……だから、気にしなくていいよ」

「でも」


私が指輪に手をかけると、彼はそれを上から押さえた。


「紗彩ちゃんの旦那は、イコール紗優ちゃんのパパだ。
それを失くすことなんかできないだろう。彼がいなければ、あの子は生まれてこないんだから」

「でも、……紗優はもうパパの事より、あなたの事が好きになってる」

「それは子供だからだろ? 
今は確かに近くにいる人が一番になるだろうけど。
子供はいつまでも子供じゃない。
本当の父親に感謝する日はちゃんと来るよ。紗彩ちゃんが、ちゃんと伝えて行けばね」

「……」

「だから、いいんだって。それにサユちゃんはちゃんとパパのことを大事にしてるじゃん。今日それが、よくわかったろ?」

「……それは」

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