契約恋愛~思い出に溺れて~

水族館で、見せてくれた紗優の笑顔。

『パパにおじちゃんをみせにきたの』

そう言ってくれた。

パパの事、忘れないでいてくれた。


「……うん」


浮かんでくる涙を、英治くんの手が拭ってくれる。

少し固い指。
男の人の指。

嬉しくて、胸が震える。

なのに、余裕のある顔を崩さずに、彼は爆弾宣言を落とした。


「それに、俺も二股みたいなもんだし」

「え?」

「しかも結構惚れこんでる」

「ええっ」


慌てる私を見て、彼はまたプッと吹きだした。
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