契約恋愛~思い出に溺れて~


「かわいいねぇ。紗彩ちゃんは」

「なっ、ちょっ、や、だって、誰?」


だって嫌だもの。
自分の事は棚に置いといてなんだけど。

イヤ。

もうあんな姿見るのはイヤ。

他の女の人と一緒の英治くんを見るのは嫌だ。


「紗優ちゃんだよ」

「え?」

「俺、あの子大好きだから。紗優ちゃんと紗彩ちゃん、二股かけてるみたいな気分」


意地悪そうに、にやりと笑う。
私は力が抜けて、軽く英治くんを睨んだ。


「ひどい」

「はは。ごめんごめん」


全然心こもってない。

意地悪。

英治くんのバカ。


「……びっくりしたんだから」


自分でも、驚くくらいの甘えた声が出た。
彼が目を見開いて、私の顔を見る。

一体私は、今どんな顔をしてるんだろう。
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