契約恋愛~思い出に溺れて~
ああ。
こんな風に誰かに甘えるなんて、一体いつ以来だろう。
ドキドキしてるのに、安心する。
ずっとこんな風に、傍にいて繋がっていたい。
「……ううん」
小さな紗優のうめき声に、私と英治くんははじかれたように離れた。
後部座席を見れば、紗優はまだ眠りこけていて。
何か夢でも見ているのか、眉を寄せて難しい顔をしている。
「びっくりした」
「うん」
私たちは顔を見合わせて、そして笑った。
「……帰ろうか」
「え?」
「名残り惜しいけど、今から帰ったら21時だ。
サユちゃんを遅くまで連れまわすのも悪いからね」
「そ、そうね」
もう少し一緒にいたい。
そんな気持ちもあって、曖昧に返事をする。
すると彼はクスリと笑って、手をハンドルにかけた。