契約恋愛~思い出に溺れて~
驚きで言葉も出なかった。
技巧的。
そう一言で言えばそれまでだけど、人を引きつける不思議な魅力があった。
もちろん、麻子さんの奏でる深みはまだない。
けれどもそれは経験の差というものだろう。
この若い女性にそれを求めるのは酷というものだ。
音色は時に儚く時に情熱的に響く。
いつしか私は演奏に聞き入っていた。
麻子さんがいた頃みたい。
隣にはユウがいて、二人で肩を並べてお酒を呑んだ。
ユウも私も強い方だったけど。
安心していたのかな。
ユウといる時は必ず私の方が酔っぱらった。
あっという間に目の前のグラスは空っぽになる。
そのまま目を閉じて、彼女の奏でる演奏の波に揺られてた。