契約恋愛~思い出に溺れて~
大丈夫なのかな。
少し心配。
ユウとの時は反対されたし。
あの頃は若かったから、そんな事何もかも押し切る事が出来たけど。
今の私だったらどうだろう。
流れる景色を見ながら考えていたら、静かに手を握られた。
振り向くと、彼がこちらを見てる。
「……大丈夫だよね」
声に出さずに口に含んで、眠るようなふりをして彼の肩に寄りかかった。
そうしてるだけで、なんだかとても安心感がある。
言葉もないのに幸せな気分で、家までの時間を過ごした。
もう少し時間がたつのが遅ければいいのにと、思いながら。
「着きましたよ」
運転手さんの声に、現実に戻される。
「おやすみ。また連絡して」
「うん。気をつけて。今日はありがとう」
「紗優ちゃんにもよろしくね」
私が頷くのを確認して、車は走り出した。
英治くんと一緒にいるのは楽しい。
それだけに、この瞬間が寂しくて仕方ない。