契約恋愛~思い出に溺れて~


 約束の土曜日はすぐやってくた。

両親も朝から緊張気味にそわそわしていて、紗優は英治くんが来ると知って浮かれ気味だ。

挨拶するって言ってたけど、一体どういう挨拶をするつもりなんだろう。

父も母も、挨拶したいという言葉だけで、すっかり結婚の申し込みのように思いこんでる。

一応そのつもりはあるって言ってはくれてたけど、これじゃ英治くんにプレッシャーを与えたりしないだろうか。


約束の11時。
玄関のインターホンが鳴る。

私よりも先に紗優が駆け出した。


「おじちゃん、いらっしゃい!!」

「や、紗優ちゃん」

「英治くん。いらっしゃい」


私の顔を見ると、彼は小さく吹きだした。


「な、何よ!」

「緊張しすぎ。変な顔になってるよ」

「な、そんなこと」


ないとは言い切れない。

だって、もう胃のあたりがぐるぐるしてるもの。
仕事でプレゼンするときよりも、ずっと緊張してるのが分かる。

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