契約恋愛~思い出に溺れて~
「……ユウの事、悪く言わないで」
「紗彩?」
「どうして母さんはいつもユウを悪く言うの?」
「だって、あの人……仕事もしないで。殆ど紗彩に働かせてたじゃないか」
「だけどその分、あの人が家事全般をやってくれたのよ。母さんと同じじゃない」
「あの人は男の人よ」
「でも、私が働いてたんだからそれで良かったのよ」
コーヒーがいい香りを放っている。
それを飲んだわけでもないのに、口の中が苦い。
大声をだしちゃ、駄目だ。
英治くんがいるんだから。
でも彼がいるからだから、かもしれない。
いつも私の気持ちを認めてくれる彼がいるから。
珍しく自分の気持ちが抑えられない。