契約恋愛~思い出に溺れて~
「……ユウ」
ボロボロと流れ落ちる涙。
ずっと溜めこんでいた、母がユウを悪く言う事への不満が、一気に噴き上がってきたみたいに。
止まらなくて、止められない。
英治くんが来てるのに。
早く戻らなきゃいけないのに。
中々涙が止まってくれない。
そのうち、階下から話声が聞こえて、階段を上る音が聞こえてきた。
扉を叩く音と共に響いたのは、彼の声だ。
「紗彩ちゃん?」
「ひぇ、ひぇいじくん」
「なんて声だしてんの。開けるよ?」