契約恋愛~思い出に溺れて~
小さな笑い声と共に、扉が開く。
苦笑を宿した英治くんが、子供にするように私の頭を撫でる。
「意地っ張りちゃん」
「なにそれ」
「案外泣き虫ちゃんだよね」
「……何、それっ」
それでも、英治くんと軽口を叩き合ってると落ち着いてはきた。
ようやく涙が止まって、私はティッシュを探して部屋をきょろきょろする。
そして、それを取って涙を拭いている間に、英治くんは仏壇の方へ行った。
「開けていい?」
「え? でも」
「旦那さんのだろ? 名前何だっけ」
「ユウよ。優しいって書いてユウ」
「女の子みたいな名前なんだ。……ああ。紗優ちゃんの名前って2人から取ってるんだ」
「うん」
話しながらも、英治くんは仏壇を開け、中の写真を確認する。