契約恋愛~思い出に溺れて~
「……落ち着いたら、一緒に下に行こうか」
「うん」
そう言っているうちに、まだ階段を上がる音が聞こえて。
慌てて離れるのと同時に、紗優が入ってきた。
「……ママ、だいじょうぶ?」
「紗優。ごめんね。ケーキ食べた?」
「まだ。ねぇママ、いっしょにたべよ?」
必死に右腕を引っ張る紗優に連れて行かれるように、
三人で一階に下りた。
母親と目があって、気まずい気持ちで下を向いたけど、
後ろから英治くんに背中をポンと叩かれたら、
「母さん、ごめん」
と素直に言えた。