契約恋愛~思い出に溺れて~
母は少し涙目で、呟くように言う。
「母さんもごめん。ずっと……ごめんね」
それを見ていた父は、どこか満足そうに頷いていた。
一瞬静かになる室内に、紗優の元気な声が響いた。
「ケーキおいしそう。サユ、たべたい」
その声に救われて、室内には再び和やかな空気が流れる。
「コーヒー冷めちゃったよね。また入れてくる」
そう言って立ちあがって部屋を出ようとした時。
「紗彩をよろしくお願いします」
父の声が聞こえた。
振り返った瞬間、頷く英治くんが見えて、嬉しくて堪らなくなった。