契約恋愛~思い出に溺れて~

小さな嫉妬



 「じゃあ、出かけてくるから」


そういう私たちを、両親は優しく見送ってくれた。


「時間は気にしなくていいわよ」


そんな、意味深な一言まで付け加えて。

英治くんの顔を見れば、何事もないような顔で微笑んでる。
何だか自分だけ舞い上がってるみたい。


「はやくいこうよう」


ご機嫌な紗優が、今日こそは自分の番だと、助手席に陣取る。

私は一人後部座席で、なんとなく寂しくなりながら、二人が楽しそうに話す会話を聞いていた。


「紗優ちゃんも小学生になるのかぁ」

「うん。でもねぇ。ちょっとつまんない。
がっこういったらサトルくんとあそべなくなっちゃうもん」

「でもたくさん友達出来るよ?」

「うん、でも。サトルくんとおうちがちかかったらよかったのに」


< 326 / 544 >

この作品をシェア

pagetop