契約恋愛~思い出に溺れて~


デパートに行って、来週の卒園式に紗優に着せる服を見た。


「どう、おじちゃん」


年頃の女の子みたいに、紗優は頬を染めて少しかしこまった服を一回りして見せる。


「うん。似合うよ。可愛いね」

「じゃあこれにする」


会話だけ聞いていたら、恋人同士の会話みたい。

英治くんが言ってた、「紗優ちゃんに惚れこんでる」って言う言葉は、あながち嘘でもないのかなと思う。


そのまま英治くんがお会計にいこうとするから、慌ててひきとめる。


「これは、自分で払うから」

「買ってあげるよ」

「でも、紗優の事はちゃんとやりたいの」

「ハイハイ」


あっさりと諦めて服を私に渡すと、紗優の方へと行ってしまう。

また意地っ張りって言われちゃうのかしら。
でも、まだ結婚した訳でもないし。

おんぶに抱っこみたいになるのは好きじゃない。

だけど、ああして紗優とばっかり仲良くされるのも寂しい。

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