契約恋愛~思い出に溺れて~
会計を終えて戻ると、紗優が英治くんの袖を引っ張っていた。
「どうしたの?」
「おもちゃみたいの」
「買わないわよ、紗優」
「みるだけだよう」
なんとなく二人で示し合わせた視線を送り合っているので、英治くんを一睨みする。
「……英治くん買っちゃダメよ」
「やっぱりバレた?」
「当たり前でしょ。何もない時におもちゃは買わないの」
「卒園のお祝いにしようかと思って」
「それは卒園してからにして」
「ハイハイ」
「じゃあきょうはみるだけでがまんするもん!」
ちょっと不貞腐れたように、紗優が頬を膨らませた。
どんどん先に歩いて行っちゃうので、私と英治くんは少し遅れた格好になる。