契約恋愛~思い出に溺れて~
「大丈夫よ。今行くからコンロ触らないでね」
「はーい」
紗優の返事を聞いて安心するとともに、英治くんの手が私の手から離れた。
「紗彩ちゃん危ないから、俺が運ぶよ」
「だ、大丈夫よ! 鍋くらい毎日持ってる!」
「ホントかな。信用ならないなぁ」
からかうような口調でそんな事を言われて、返す言葉が見つからない。
彼が鍋を運んで戻ってくるのを不貞腐れて見ていると、ゆるく笑って軽いキスをされた。
「そんな顔されると困るな」
「なんでよ」
「帰したくなくなるし」
「え……」
ドキンと心臓が大きく跳ねる。
彼は笑顔を崩さずに耳元に囁きかける。
「明日は日曜だし、泊まってく?」
「……あ、あの」