契約恋愛~思い出に溺れて~
ほったらかしにされていた紗優は少し拗ねているように、膝を抱えて膨れていた。
「ごめんね。食べよう」
「ほら、紗優ちゃん何が好き? 魚?」
「……ネギがキライ」
「じゃあ頑張って食べたらご褒美な」
敢えてネギを入れられて、紗優は困った顔をしつつも、頑張って食べた。
少し涙目で、渋い顔をしている。
だけど、それでも食べた紗優を、偉いと思った。
「おじちゃん、こんどまたキャッチボールして」
「ああ、いいよ。いくらでも」
返事を聞いてようやく笑う。
彼は満面の笑みで、紗優を抱き寄せた。
「サユちゃんは偉いな」
「えへへ」
まるで、本当の親子みたい。
ううん。本当の親子より、仲が良いかもしれない。
本物じゃないから、近づこう近寄ろうと努力して。
その結果、2人の間にはちゃんと絆が生まれている。
いいな、と思う。
私もきっとそういう風に努力をするべきなんだ。
英治くんの好意に甘えてるだけじゃなくて。
自分からちゃんと気持ちを伝えていかなくちゃ。